●モトヤアポロ●

【モトヤ(山田博人)/タイプ活字:1969〜、フォント:2002.5〜】

活字はよみがえる

 この書体は、かつて金属活字メーカーとして有名だった「モトヤ」の作品です。モトヤは20世紀終盤まで金属活字による組版を続けてきましたが、出版業界全体のデジタル化の中で、モトヤによる活版印刷用の活字は1996年に終焉を迎えました。

 元々「モトヤ楷書」などを写研やモリサワといった写植機会社に提供していたため、活版印刷でなくてもモトヤの書体を見ることができましたが、2000年代に入ってからはパーソナルコンピュータ用のフォント制作へ積極的に取り組んでいるようです。また、ワードプロセッサにモトヤの書体が搭載されていた時期もありました。

 今回の「モトヤアポロ」(以下「アポロ」)は、モトヤのサイトによると1969年に「タイプ活字」用に「アポロ2」が制作されました。おそらくは和文タイプライターに搭載するための活字だったのでしょう。そのためか最近までこの書体を見ることはありませんでしたし、名前を聞いたこともありませんでした。
 ちなみに和文タイプライターも活版同様、印鑑のように凹凸で文字を表現したものを使っていました。(余談ですが、使える和文タイプライターがあれば欲しいと思っています……。)

 アポロの特徴としては、明朝体の漢字や「タイポス」のように縦画は太く、横画は細くしたことによって視認性に優れ、字画を幾何学的に処理することで明るく親しみやすい印象があります。細いウェイト(書体の太さ)は優雅で軽やか、太いウェイトは力強くありながら明朝体ほど堅苦しくないと思います。完成度が高く、特に細めのウェイトで組むと美しいと思います。
 モトヤのサイトには書体づくりへの真摯な姿勢が綴られており、品質の高さも頷けます。作者はモトヤ社員の山田博人氏(故人)。書家でもあったためか、この書体の文字のバランス感覚は優れたものであるように思います。
 書体名の由来は分かりませんが、おそらくは当時のアメリカの月探査船に因んだものなではないかと思います。

 アポロは2002年にデジタルフォントとしてよみがえり、ウェイト(太さ)展開をしてその活躍の場を広げつつあります。デジタル化によって徐々に印刷物への使用が増え、日本テレビや名古屋テレビ放送の字幕にも頻繁に使われています。
 前回「ピコカジュアル」とは対照的に、タイプフェイス(書体のデザインそのもの)の容れ物が変わったことで日の目を見た書体の好例と言えるでしょう。

●ファミリー

 アポロ2  1969
 アポロ1、3〜8  2002.5


2005.1.7
2006.11.17 加筆

書体のはなしに戻る

メインへ