

|
今回は、書体というよりは「記号」についてのはなしです。 この記号は、写植会社「写研」の手動写植機のために作られたサブプレート(文字盤……文字や記号が収められているガラス製の板)に収められています。写植には、数えきれないほどの記号や地紋なども用意されており、どんなニーズにも応えられるようになっています。(家の間取り用や、化学のベンゼン環を印字するためのものもあり、使い道の幅広さに大変驚きました。) そんな記号たちの中でも一番印象的なのがこの「記号BA-90」です。見てのとおり、“にはっ”と笑った顔がデザインされています。この印象的な記号は、漫画好きの方や昭和50年代までに生まれた方なら一度は見たことがあるかも知れません。 この記号が生まれた経緯はよく知られていません。収録されている「BA(飾り罫・地紋)」というサブプレートを見ると、(C)写研 '68 と記されていました。書体の種類が少なかった1968年にはもうこの記号が存在していたのです。手動写植機の円熟期である1980年代には、雑誌や漫画の台詞などに頻繁に使われていました。写研の電算写植機にも「一般記号 SAA1-244」として登録されているのですが、やはりDTPの普及によってあまり見かけなくなってしまいました。 BA-90の魅力は、その独特な味わいにあると思います。普通のスマイルマークを描くよりもあやしくて、ちょっと無気味で、お茶目で憎めません。真面目な石井細明朝体などと一緒に使うと、何とも言えない脱力感に包まれますね(?)。未だ、BA-90を超える脱力感の笑顔マークに出会ったことがありません。(余談ですが、私が描いている漫画『パンタ・うさの物語』の、小学1年の時に描いたもの(クリックで画像が見られます)にもこの記号が登場しています。2002年用の年賀状にも使っています。とても好きなんです……。) 写植(写研)だから使えないというわけでもなく、最近では写植書体をアウトライン化してデータを届けてくれる業者もありますので、この記号を使いたい方は利用してみるのもいいかも知れません。 ●イワタアンチック体とBA-90 2002年に老舗活字会社の「イワタ」が発表した書体「イワタアンチック体」(※リンク先はPDFです)には、BA-90にそっくりな笑顔の記号が収録されているようです(他にも、写研のにそっくりな記号がある・下図)。 イワタアンチック体に収録されている記号。 写研の記号BA-90(左)と記号BA-88(右)にそっくり……というか、そのまんま!? そっくりというか、そのままという感じがします。BA-90の著作権は写研にありますので、複製は許されないはずです。サイトの画像だけでは判断できませんが、もしBA-90をそのままイワタアンチック体に搭載してしまったとしたら大問題ですね……。イワタのような老舗なら気を付けているとは思いますが。 補足 2004.3.18 2007.7.30 追加 |