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1924年に写真植字機(写植機)が発明されて約80年。その写植の歴史とともに歩んできたのがこの「石井太ゴシック体」です。 この書体は1932年、写植機用の最初の書体として「石井中明朝体」とともに制作されました。制作者は石井茂吉氏で、「石井写真植字機研究所」(現在の写研)の創始者です。同じく創始者の森澤信夫氏は写植機の開発に尽力し、第2の写植機メーカー「モリサワ」を創建しています。 石井ゴシック体ファミリー(同じデザインの書体の集まり)は、書き文字に近い自然でやさしい字形が特徴です。書体自身に主張や癖がなく、読むことを邪魔しないため、どんな文章にも対応することができます。 画線の両側が広がるようにデザインされているのですが、これは「角立て」といい、写植機が光学的な仕組みを利用しているために必要な処理で、光の回折(回り込み)によって文字が細く印字されることを防いでいます。性能が向上した現在の手動写植機やデジタルフォントを使っている電算写植機では必要のないデザイン処理ですが、この画線の広がりが石井ゴシック体の特徴となり、あたたかみや安定感、真面目さを感じさせます(図1)。 ![]() 図1 画線の両端に広がりがある書体、ない書体 同じように角立てをした書体は最近のデジタルフォントではあまり見かけなくなりましたが、モリサワの「太ゴB101」、フォントワークスの「(ニュー)セザンヌ)」等があります。(「ヒラギノ角ゴシック体」の処理はちょっと別物という気がします。) 石井ゴシック体は下のようにたいへん大きなファミリーで、それぞれ少しずつ生い立ちが違います。石井細ゴシック体は小さく印字しても文字が潰れないようにと地図の地名用に制作され、石井中ゴシック体は高度成長期以降の雑誌の本文に使われて人気が出た書体です。石井中太Lゴシック体(最近の電算写植では「石井中ゴシック体L」)は、本文として組んだ時に文字がぱらついて見えないように字面を大きめにした書体です。 DTP(パーソナルコンピュータを使って出版、印刷すること)の普及が始まる1990年代前半までは様々な印刷物に使われる基本中の基本の書体でしたが、現在では少しずつ活躍の場が減っています。ただし月刊誌や単行本等の書籍、NHKやTBSの字幕には頻繁に使われており、文字を扱う大手の会社では高い信頼を得ているようです。有名な使用例としては、味の素のキャッチコピー「あしたのもと」があります。 定規で引いたような現代的なゴシック体もいいのですが、しなやかな曲線を持つこの書体がとても好きです。完成度が非常に高く、詰めて組んでもそのまま組んでも美しい仕上がりになると思うのです。何やら色気のようなもの(変な意味でなくて)を感じるこの書体を、できることならずっと使っていきたいです。 ●ファミリー 石井細ゴシック体 LG-KL(手動写植機用のみ) 1938頃? 1999.6.9 2005.1.22 改稿 |