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明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体の3種類を“基本書体”と呼ぶことがありますが、今回はその中の一つ、丸ゴシック体の話です。戦前にも丸ゴシック体は存在していたのですが、ここでは今でも使用できる写研の丸ゴシック体を取り上げることにします。 この「石井丸ゴシック体」ファミリー(同じデザインの書体の集まり)は、1956年発売の「石井中丸ゴシック体」を原点とし、1958年に細、太のウェイト(書体の太さ)へと展開しています。 この書体の特徴は「石井ゴシック体」の角を丸くしたようなデザイン処理で、優しくあたたかい印象を持っています。字形はさすがに歴史を感じますが、それがかえって味になっていると思います。パーソナルコンピュータで使えるデジタルフォントでこういった基本に忠実で真面目な表情を持つ丸ゴシック体はないと言ってよく、オーソドックスな造りなのに独自の個性を発揮していることになってしまっています。個人的にはひらがなの「と」の1画目が2画目の線から突き抜けているのが好きです(題字参照)。 用例としては、発売当時はネームプレートやテレビのテロップに使われていたようで、写植の全盛期にはやはりテロップや各種印刷物に使われました。現在はテレビコマーシャルや新聞・雑誌広告のメインコピーに使われていることが多く、写植を使うことが少なくなったにもかかわらず敢えてこの書体が選ばれていて、一定の需要があるようです。やはりこの書体でしか表現できないものがあるからなのでしょう。また、TBSのニュースのテロップでも「石井太丸ゴシック体」を見ることができます。 ![]() 図1 写研製の丸ゴシック体の比較 図1の「ジャズやるべ。」という言葉は映画『SWING GIRLS』のキャッチコピーで、ガイドブックなどに「石井太丸ゴシック体」で組まれたものがありました。ご覧のように“東北地方の田舎の高校生がビッグバンドジャズをやる”という映画の雰囲気をうまく表しているように思います。これを試しに「ナール」や「平成丸ゴシック体」で組んでみると、何だか都会的すぎるような気がしてしまうのですが、いかがでしょうか。こうして比べてみると「石井丸ゴシック体」は人間らしくて意外と可愛らしい書体なのかもしれませんね。私も愛用している書体です。 ●ファミリー 石井細丸ゴシック体 1958 2005.11.23 |