見本は印刷物から集字したものです(灰字はモトヤアポロ2)

●ピコカジュアル●

【小塚昌彦/1970年代?〜】

忘れ去られてしまった書体

 「ピコカジュアル」という仮名書体をご存知でしょうか? おそらく知っている方は殆どいないかと思います。この書体の制作者は「小塚明朝」や「新ゴ」で有名な小塚昌彦氏だったと記憶しています。下の使用例から推し量って、写研の手動写植機用に作られたデザイナー書体ではないかと思います。現在では全く見かけなくなってしまった、いわば「忘れ去られてしまった書体」です。

 私がこの書体を初めて見たのは、学生時代に書店で手に取ったレタリングの教則本でした。このなかなか真似できない、くるんとした線が可愛らしくて、それでいてちょっと怪しげなデザインが気になっていたのですが、探した限りでこの書体が使われている印刷物は2例しかありませんでした。上のレタリング教則本と下に挙げる漫画なのですが……。

 『っポイ!』(やまざき貴子作/白泉社)という漫画のコミックス18巻と22巻にその姿を見ることが出来ます。下図のように、細身でカールしたデザインは絵本の本文などにぴったりだと思います(漫画の内容は『不思議の国のアリス』のパロディでした)。また、「す」「は」「ま」などは画線が大胆に省略され、一度見たら忘れないぐらい目を引きつけます。


 吹き出しに使われているピコカジュアル
(出典:やまざき貴子『っポイ!』18巻)

 おそらく「ピコカジュアル」はこのまま写植の文字盤にのみ姿を遺し、そのタイプフェイス(書体のデザインそのもの)を見ることもできなくなってしまうことでしょう。独特な印象を持っているだけに惜しいですが、タイプフェイスの容れ物(金属活字、写植文字盤、データ等)が変化するにつれて生まれるたくさんの書体の陰で、このように消えてゆく(であろう)書体もあることを忘れてはなりません。

※もし現役で使っていらっしゃる方がいましたらこっそり教えてください。


2004.12.7

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